旧秋田商会ビルの基本情報と歴史を徹底解説
下関港の発展とともに歩んだビルの歴史

旧秋田商会ビルは、山口県下関市の唐戸エリアに静かに佇んでいます。この唐戸は、かつて日本とアジアを結ぶ国際貿易の拠点として、非常に栄えた港町でした。そして、その中心地で大正4年(1915年)に建設されたのが、この旧秋田商会ビルなのです。
なぜなら、当時、木材や海運業を営んでいた秋田商会の社屋として、最先端の技術とデザインが惜しみなく注ぎ込まれたからです。その重厚な外観と優美なデザインは、下関港の繁栄を象徴するかのようで、今もなお、訪れる人々に当時の活気を伝えています。
なぜ「鉄筋コンクリート造」だった?当時の最先端技術に迫る

このビルが、歴史的価値の高いレトロ建築として注目される最大の理由は、その建築技術にあります。実は、このビルは西日本で最初の鉄筋コンクリート造の事務所建築と言われています。当時としては非常に珍しいこの工法を採用したのは、オーナーの秋田清の「新しいもの好き」な一面があったから。耐震性や防火性に優れ、自由な設計が可能になるこの新技術を、いち早く自身の社屋に導入したのです。それは単なる実用性だけでなく、時代を先駆ける進取の気性を表すシンボルでもありました。まるで未来への窓を開くかのような、当時の熱い思いがこの堅牢な壁に刻まれているかのようです。
知的好奇心を満たす、和洋折衷のモダンデザイン
外観からは想像できない!内部に潜む驚きの和空間

旧秋田商会ビルの外観を眺めるだけでは、その本当の魅力は半分も分かりません。しかし、一歩足を踏み入れると、その奥深さに驚かされることでしょう。1階は純粋な洋風の事務所や応接室として使われていましたが、なんと、2階と3階は、格式高い書院造りの住宅となっていました。
事務所として西洋の文化を取り入れつつ、プライベートな空間は日本の伝統を重んじる。この和と洋の様式が完璧に融合した驚きの構造こそが、この建物のハイライトです。現在、1階は観光情報センターとして、そして2階と3階の和室も無料で一般公開されています。そのため、実際に畳に座ったり、障子戸の向こうに広がる景色を眺めたりと、当時の生活様式を肌で感じることができます。このユニークな「洋館と和室」の組み合わせは、歴史好きの心をくすぐる、まさに隠れた見どころと言えるでしょう。
オーナーのロマンが詰まった「幻の屋上庭園」

さらに、この建物には知る人ぞ知るロマンチックな物語があります。このビルが建てられた大正時代、人々を驚かせたのが屋上にあった「幻の屋上庭園」でした。最上階のさらに上、塔屋には離れの座敷と、美しい日本庭園が設けられていたのです。これは、賓客をもてなすための特別な空間であり、海の景色を眺めながら茶会を開くなど、贅沢な時間を過ごす場所でした。
そして、驚くべきは、この屋上まで繋がっていた**小型エレベーター(ダムウエーター)**です。日本でエレベーターがまだ珍しかった時代に、個人宅兼社屋に設置されていたという事実は、オーナーの秋田清がいかに新しい技術や文化を愛し、取り入れていたかを物語っています。残念ながら、この屋上庭園とエレベーターは一般公開されていませんが、その存在を知ることで、この建物の奥深い魅力に触れることができます。
旧秋田商会ビルと歩く、下関レトロ建築巡りモデルコース
異国情緒あふれる唐戸エリアの歴史的建造物
下関南部町郵便局|観光スポット|【公式】山口県観光/旅行サイト おいでませ山口へ
旧秋田商会ビルがある下関市は、かつて日本と世界を結ぶ重要な港町として栄えました。そのため、周辺には旧秋田商会ビル以外にも、異国情緒あふれるレトロな建築物や、歴史を感じさせるスポットが点在しています。せっかくなら、旧秋田商会ビルを起点に、港町の下関をじっくりと散策してみませんか。
旧秋田商会ビルから歩いてすぐの場所には、旧英国領事館があります。これは、明治39年(1906年)に建設された、赤レンガが美しい歴史的建造物で、国の重要文化財にも指定されています。内部にはカフェや展示スペースがあり、英国の雰囲気を味わうことができます。また、下関南部町郵便局も近くにあり、明治期のモダンな洋風建築を眺めながら、当時の活気を感じることができます。
散策の休憩に!レトロな雰囲気のおすすめカフェや休憩所3選
下関南部町郵便局|観光スポット|【公式】山口県観光/旅行サイト おいでませ山口へ
【下関市】唐戸の昭和レトロ館にふらりと入ってみたら、昭和グッズに圧巻されました。 | 号外NET 下関市
古民家カフェってだけじゃない 下関市「バグダッドカフェ」 | 山口さん
たくさん歩いて疲れたら、レトロな雰囲気のカフェや休憩所で一息つくのがおすすめです。
- 旧英国領事館内カフェ 重厚な歴史的建造物の中で優雅なティータイムを過ごせるのが、旧英国領事館内にあるカフェです。赤レンガ造りの美しい洋館の雰囲気そのままに、落ち着いた空間が広がっています。ここでは、当時のイギリス外交官が楽しんだかもしれない本格的な紅茶や、洗練されたスイーツを味わえます。まるで時代をさかのぼったかのような、特別なひとときを楽しめるでしょう。
- 唐戸昭和れとろ館 レトロな魅力が詰まった唐戸昭和れとろ館も、休憩にぴったりです。懐かしい昭和の玩具や家電などが所狭しと並べられた空間は、いるだけでワクッとするはず。この施設はノスタルジックな雰囲気に浸りたい方には特におすすめです。
- バクダッドカフェ 唐戸市場のすぐそばにあるバクダッドカフェは、そのユニークな内装が魅力です。異国情緒あふれる店内で、ゆったりとくつろげます。ここでは、こだわりのコーヒーや、ボリューム満点のトルコ風ライスなどが人気です。レトロな喫茶店の雰囲気と、異国を感じさせる独特の空気が混ざり合った、不思議な居心地の良さを感じられるはずですよ。
訪問前にチェック!旧秋田商会ビルのアクセス・開館情報
旧秋田商会ビルを訪れる際の基本情報をまとめました。無料で内部見学ができるので、気軽に立ち寄って歴史と建築の魅力を体感してください。
- 所在地: 山口県下関市南部町23−11 下関観光情報センター
- 開館時間: 9:30~17:00(最終入館16:40)
- 休館日: 毎週火曜日、水曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
- 入館料: 無料
- アクセス(車): 中国自動車道「下関IC」から約15分。
- アクセス(公共交通機関): JR「下関駅」からバスに乗車し、「唐戸」バス停で下車後、徒歩約1分。
よくある質問(FAQ)
Q1:旧秋田商会ビルの見どころは何ですか?
A1: 旧秋田商会ビルの最大の見どころは、和洋折衷のユニークな建築様式です。1階が洋風、2・3階が書院造りの和室という、珍しい構造をしています。また、日本で最初期の鉄筋コンクリート造である点も、歴史や建築に興味がある方には見逃せないポイントです。
Q2:旧秋田商会ビルは入館料がかかりますか?
A2: いいえ、入館料は無料です。観光情報センターとして利用されており、誰でも気軽に内部を見学できます。
Q3:旧秋田商会ビルの近くにおすすめの観光地はありますか?
A3: はい。徒歩圏内には、旧英国領事館や下関南部町郵便局といったレトロ建築が点在しており、合わせて楽しむのがおすすめです。また、近くの唐戸市場では新鮮な海鮮グルメも堪能できます。
旅の最後に:旧秋田商会ビルから始まる、下関レトロ旅

旧秋田商会ビルは、ただの建物ではありません。それは、下関港の繁栄と、新しい時代を切り拓こうとした人々の情熱が詰まった、生きた歴史そのものです。和と洋が融合したユニークな建築様式や、屋上に隠されたロマン、そして何より無料で内部を見学できることは、きっとあなたの知的好奇心を満たしてくれるでしょう。
このビルを訪れた後は、周辺の旧英国領事館や唐戸市場へと足を延ばし、港町の異国情緒をさらに深く感じてみてください。レトロな街並みを歩き、おいしいグルメを楽しみ、心ゆくまで下関の魅力を堪能する。旧秋田商会ビルは、そんな素敵な旅の最高のスタート地点となるはずです。
さあ、カメラを片手に、あなただけの「大正ロマン」を探しに出かけてみませんか。